漢方漫歩INDEXへ 夏のウナギ腎を補い気を強める
夏のスタミナ源として、日本ではウナギをよく食べる。この時期にウナギを好んで食べる習慣は、中国にはない。その意味を中医学的に考えてみた。
日本の夏は高温多湿で、大量の汗をかく。むやみに汗をかくことは、体内の気を消耗して、エネルギー不足の状態(気虚)を招きやすい。加えて、冷たいもののとり過ぎが目立つ。冷たいものの過食は陽気を傷つけ、気虚をさらに加速する。
ウナギの性質は「腎を補い、虚弱を強壮する」(本草彙言)といわれている。
一方、中医学の根幹をなす理論の一つに「気の源は腎の精にある」(黄帝内経)がある。2つを考え合わせると、なるほど夏のウナギは腎を補い気の働きを強める、まさに“精”のつく薬餌ということになる。
夏に腎を強化することは、喘息や関節痛といった冬に現れやすい病気を予防したり、軽減してくれるというメリットもある。中国漢方の「冬病夏治」という言葉は、知っておいて損のないものだろう。
腎を強化する漢方薬は数多いが、なかでも「海馬補腎丸」は滋養強壮薬としてよく使われる。海馬(タツノオドシゴ)、鹿茸(シカの角)などの貴重な動物性生薬が含まれ、腎気を補う働きも強い。
ただし、この時期は発汗により陰(水分)を消耗しやすいので、日頃のぼせやほてり傾向のある人は六味地黄丸系統の薬を併用するとよい。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/08/01