漢方漫歩INDEXへ 心神の安定熟睡の重要な条件
中国漢方では心を神(精神)の舎る臓器ととらえており、心の神、つまり精神の安定(安神)こそ入眠・熟睡の条件としている。
前回は気・血・陰(体液)などの不足から起こる虚証タイプの不眠について触れた。不眠にはもう一つ、体内に心の神の安定を邪魔するものがあって眠れない実証タイプがある。
虚証の不眠は身体に不足しているものを補うのに対して、実証の不眠は心の安定を邪魔するものを取り除き、心身の興奮をおさえることによって解消できる。
ストレスや精神的な刺激が引きがねで起こる不眠は、興奮して眠れない・寝つきが悪いといった訴えのほかに、口が粘る・口が苦いなどの症状を伴うことが多い。このような場合は、精神を安定させる柴胡加竜骨牡蛎湯や温胆湯が使われる。
肉や脂っこいものなどカロリーの高い食べ物の取り過ぎなどのため、体内に熱を持ち、この熱のため神経が興奮しても不眠は起こる。不眠のほか、イライラ・心が落ち着かない・口内炎や吹き出物ができやすい・尿の色が濃い・ほてりなどの熱症状を伴う場合には、身体の熱を取り除き、心身の興奮状態をおさえて自律神経を安定させる黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)が効果をあげる。
更年期では、疲労やストレスが蓄積されたうえに、体力的にも衰え、身体のバランスが崩れ、実と虚が入りまじった不眠が起きる。治療にはそれぞれの薬を組み合わせて用いる。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/08/29