漢方漫歩INDEXへ 秋の乾燥期麦門冬で肺に潤い
「ノドの具合がおかしいんですよ」
北京まで同行してくれた日本人が、着いて2〜3日後に、ノドの痛み、からセキ、熱っぽさを訴えてきた。大陸特有の乾燥気候が、呼吸器系に影響を与えたのだろう。逆に、私は日本の湿気が苦手で、梅雨どきには体調を崩しやすい。環境が変わると、日ごろは健康に自信のある人でも、体調を維持するのは容易なことではない。
気候風土と病気には、密接な関係がある。秋は、中国漢方でいうところの「燥」の季節である。気象条件の中でも、乾燥(燥邪)によって引き起こされる病気が多い。
燥邪の影響を最も受けやすいのは、ノドや鼻、気管支などの呼吸器系である。秋から冬の乾燥期の呼吸器系の病気には、中国漢方でいうところの「肺燥」によるものが多い。健康な人の肺は、陰液(血液・体液)によって潤され、呼吸や防衛の働きを果たしている。乾燥気候によって肺の陰液が不足してくると、からセキ、ノドの渇き、声のかすれ、ほてり、皮膚の乾燥感といった、特有の症状が現れる。治療は、肺を潤しノドや気管支の炎症を鎮める作用をもった麦門冬(ジャノヒゲの根)が主薬の麦門冬湯や、養陰清肺湯が効果をあげる。食べ物としては、ノド・気管支・肺などの呼吸器系を潤し、セキを止める効果をもつナシやユリの根、レンコン等をすすんでとるのが、秋の乾燥期の養生法となる。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/10/17