漢方漫歩INDEXへ 暑さで心臓に負担、生脈散が有効
狭心症や心筋梗塞などの心臓病発作は、冬に多発するものとされているが、真夏の暑い時期も油断はできない。記録破りの猛暑が続く今年の夏は、新聞を見ても、心臓病で亡くなる人が結構多いように思う。
中国漢方でいう暑熱の頃は、大量の発汗により体液を消耗するだけでなく、汗とともに体の中の気(エネルギー)が漏れ出るとされている。気を消耗しすぎると、心臓の機能を弱めることになり、脈拍が弱くなったり、不整脈、動悸、息切れ、倦怠無力感といった症状が現れる。また、発汗により血液が濃くなるため、粘り気が増し、血栓ができやすくなる。この季節の高温多湿な気候や、台風などによる気圧の変化も心臓に負担をかけやすい。このため高齢者や、日頃から心臓に不安を抱える人は注意が必要である。
中国では、古来より暑熱の時期の諸処状に、生脈散という薬をよく用いる。気を補い体力をつける人参、体液を増し、濃くなった血液を薄める麦門冬、皮膚の表面から汗と気が漏れるのを防ぐ五味子からなる処方である。薬理実験においても、生脈散は心臓の働きを強めるとともに、冠状脈の拡張・血液凝固の抑制・体液補充などの総合作用によって、暑熱から来る諸症状を改善してくれる。
なお、夏の食養生としては、メロンやスイカなどウリ科の果物を努めてとりたい。体液の補給とともに、メロンやスイカに歯血液が固まるのを抑制する、血栓予防の効果も確認されている。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1994/8/28