漢方漫歩INDEXへ 「邪気」取り除き「気・血・水」をスムーズに
精力剤や強壮剤を飲んでも、ちっとも効果がない。時々、そんな声を聞くことがある。滋養強壮剤はり漢方でいう気・血・水の不足を補う補剤に属し、主として栄養などの不足からくる、体力の低下に用いるものである。従って、体に何らかの病理的産物(邪気)が存在する時は、単純に補剤を用いても効果を発揮しにくい。それどころか、かえって害になることもあるので注意しなければならない。
モノの豊かな時代に生きる現代人の体質と、栄養が不足しがちだった昔の人の体質は、明らかに違う。今の日本では、栄養不足よりも、飲み過ぎ・食べ過ぎ・ストレスの蓄積などによって健康をそこなうことのほうが、ずっと多いはずである。
この場合には、足りないものを補うよりも、余分なもの(邪気)を取り除き、停滞している気・血・水をスムーズに流すような治療法(瀉法)が必要になってくる。邪気を取り除けば、正気(せいき)(抵抗力)は自然に回復してくるものなのだ。
中国漢方は、バランスの医学ともいわれる。足りないものは補い、過剰なものは取り除いて、過不足のない状態にもっていくのが治療の原則である。
気の滞りを解消し、ストレスを和らげる逍遙丸(しょうようがん)や開気丸(かいきがん)、お血(血の滞り)を改善す冠元顆粒(かんげんかりゅう)、水湿の停滞を取りのぞく五苓散(ごれいさん)や星火温胆湯(せいかうんたんとう)などは、いずれも瀉剤に属する。現代人は、補うことを考えるだけでなく、瀉剤によって元気を回復することをもっと考慮すべきである。
路京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1994/09/11