漢方漫歩INDEXへ 「飲む目薬」の異名を持つ杞菊地黄丸
燈下、読書に親しむ秋は、目の酷使からくる疲れ目、かすみ目、視力低下、目の乾燥感(ドライアイ)などを訴える人が増える。今回は、目の健康法について触れてみたい。
体の各部は、すべて有機的なつながりを持つと考えている中国漢方では、内臓と五竅(感覚器官<ごきょう>)との関連を重視している。古典に「肝は目に竅を開ける」という言葉があるように、目は肝とのつながりが深い。目と内臓のつながりを、瞳孔は腎、黒眼の部分は肝、白眼の部分は肺、目頭と目尻は心、瞼は脾(消化器系)」といったように、さらに詳しく関連づける考え方もある。
いずれにしても、目の健康にとっては、瞳孔-腎、黒眼-肝の関係が重要である。「肝腎かなめ」と言われるように、生命活動の中心に据えられる肝と腎は、働きを補い合う臓器でもある。目についていえば、腎に蓄えられた腎精、(生命エネルギー)は、肝の血と協力しあって目に精血(栄養分)をおくり、目の代謝を促進している。
目の使いすぎは、精血を消耗させ、疲れ目・視力の減退といった目の異常につながる。さらに、肝・腎の衰えは、老眼や老人性白内障の引き金になる。
肝と腎の働きを同時に強める処方と言えば、六味地黄丸(ろくみじおうがん)に枸杞子と菊花を加えた、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)がその代表格である。処方のベースとなる六味地黄丸と枸杞子には、肝腎を養い精血を増やす作用があり、菊花には目の充血をおさえ、視力を回復させる働きがある。目の症状改善に幅広く応用できる杞菊地黄丸には、「飲む目薬」の異名さえある。
路京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1994/10/23より