漢方漫歩INDEXへ 「冬場に元気つけ、体を潤す西洋人参」
日本には、年末に食品やお酒、家庭用品などを、お歳暮として贈る習慣がある。中国にも、同じ時期にこれらの品に加えて、薬用人参やロイヤルゼリーなどの滋養剤を贈る習慣がある。
これらの滋養剤は、新陳代謝の遅い冬場に摂取するのが効率的だとされている。冬の間にエネルギーを貯えることで、春から夏の病気を予防できるとする中国独特の養生法であり、「冬令進補(とうれいしんぽ)」と呼ばれて、生活の中に根づいている。
昔は朝鮮人参や鹿茸(鹿の幼角)などの、いわゆる温補剤が好まれたが、近年は西洋人参や銀耳(ぎんじ)、燕窩(えんか:海燕の巣)など、清涼感があって、滋潤(体を潤す)作用のある清補剤が多く用いられるようになってきた。
これは地球の温暖化、暖房の発達、酒類や高カロリー食品の取り過ぎ、ストレスなどの影響によって、現代人の体質が、体内に熱がこもりやすく、津液(体内に有用な水分)不足に陥りがちなものに変わってきたためだと思われる。
漢方の歴史から見ても、漢代から明代ににかけての補気剤といえば、温性の朝鮮人参や党参がよく使われたが、清の時代になると、温病(熱性疾患)学の発展により、陰虚(体液不足)に対する治療法が重要視されるようになり、凉性で滋潤作用のある西洋人参や太子参が好んで用いられるようになってきた。この傾向は今日、さらに顕著になっている。
養生法や漢方の治療法は、時代や環境の変化に伴い違ってくる。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1995/1/29