漢方漫歩INDEXへ "肺と大腸のつながり利用した「釜底抽薪」法"
中国漢方には、体の各部を、互いに有機的なつながりをもった総体としてみる、独特の考え方がある。そのため治療は、局部だけでなく、体全体のバランスを考慮して行う。
例えば、漢方の古典には「肺と大腸は表裏の関係にある」と書かれている。肺には気を下に送る(粛降:しゅくこう)作用があるが、この古典の考え方を踏まえて言えば、この粛降作用が大腸の蠕動運動を助けて、便通を促進していると考えることができる。一方、腸の働きを整え、便通を改善することで、腸と表裏の関係にある肺の粛降作用を促し、セキなどの症状を和らげるという、逆の治療法もまた可能になる。
具体例をあげると、風で発熱し、悪寒やセキがある場合に、解熱剤を用いても、熱がなかなか下がらないことがある。このような時は便秘を伴うことが多く、これに対しては、瀉下薬である大黄が入った防風通聖散のような処方を用いると、熱は下がり、セキもおさまりやすい。
またゼンソクを治療するとき、定喘湯(ていぜんとう)や小青竜湯のような気管支拡張作用のある薬だけでは、効果の出ないことがある。これに対して、大黄甘草湯などの通便薬を併用することで、うまくいく場合がある。
これらの治療方法は、燃え盛っている薪を釜の底から取り除くことで、鍋のなかの沸騰状態を鎮めるやり方に似ていることから、「釜底抽薪(ふていしゅうしん)」法ともいわれる。また、体の上部にある病気を、体の下部より治療することから、「上病下取」とも表現される。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1995/2/12