漢方漫歩INDEXへ space

「肺の働き高め、膀胱をコントロール」

 前回は、体の上部にある病気を下部から治療する「上病下取(じょうびょうげしゅ)」について触れた。今回は、逆に下部の病気を上部から治療する「下病上取(げびょうじょうしゅ)」の例を紹介する。
 例えば、尿の出が悪かったり、尿の量が少ないとき、一般的には利尿剤を使って治療する。ところが、利尿剤を使っても、効果がないことがある。この場合、麻黄や杏仁などの薬物を用いて、肺(上部)の働きを調整することによって、排尿困難(下部)を改善できる。麻黄を配合した越婢湯(えっぴとう)や、杏仁を配合した三仁湯(さんにんとう)などの処方をよく使う。
 漢方では、呼吸器系としての肺には、「通調水道、下輸膀胱」といって、脾胃(消化器系)から吸収された水分を全身に巡らし、膀胱にまで運ぶのを助ける作用があると考えている。上記の治療法は、この理論を応用したものだ。
 逆に、頻尿や尿が漏れるといった症状も、肺から治療できる。
 話し声に力がなかったり、階段を少しのぼっただけで息切れしたり、喘息があったり、呼吸器系が弱い人のなかには、ちょっと咳込んだだけで尿を漏らしたり、すぐトイレに行きたくなるといった症状に悩まされることがある。
 この場合には、上部の肺の働きが低下したことで、下部の膀胱をうまくコントロールできなくなったものと考え、肺の働きを高める補中益気丸に、肺気を収めて尿の漏れを防ぐ作用をもった銀杏(ギンナン)を組み合わせて使うことで、問題を解決できる。

路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1995/2/19



ご質問・ご相談など、お気軽にメール下さい。