創業明治三十九年 仁生堂薬局 東京千住
2015-12-17

第11回 星薬科大学薬用植物園

毎年12月上旬の土曜日、生薬に関する懇談会というシンポジウム(的な集まり)が開催されています。会場は、品川区荏原の星薬科大学です。
今回はスタッフとして、懇談会の受付を手伝わせて戴きました。

さて、薬科大学へ行く機会があるならば、ぜひ覗いてみたい薬用植物園!
少し早めに着いて、駆け足ながら見学することができました。

広さは3,000平方メートルあり、およそ1,000種の薬用・有用植物が植えられています(園パンフレットより)。最も都心に近い薬用植物園ではないかと思います。
もう12月ですから、夏の間のような青々・いきいきとした賑わいは遠く去り、植物たちはひっそりとしています。
でも、さまざまな実りや冬越しの姿を知ることができるのは、冬こその魅力です。

カンレンボクの実は面白い形

薬草園の実り。放射状のオシャレな果実は、カンレンボク(ヌマミズキ科)です。
そうです先月、小石川植物園で屹立する巨樹をみた、カンレンボク…。
薬用としての用途は、抗がん剤です(詳しくは、前回の小石川植物園編をぜひ)。
星薬のカンレンボクは、お手頃サイズでした。果実も間近でみられて、観察向きです。
個々の形状はバナナにも似ていますね。もっとも大きさが全然違います(カンレンボクの果実は長さ3-4cm)!
もう少しすると、1本1本にバラけて、地面に散布されます。
これ、数がたくさんできる上に発芽率もそこそこ良くて、小平の薬用植物園では、実生(みしょう)のカンレンボクの若木が育っています。

トウゴマ。冬空が眩しいです。

青空を目指す大きな草本植物。トウゴマ(トウダイグサ科)です。
別名がヒマ。暇じゃないですよ^^;; 蓖麻です。その種子がヒマシ(蓖麻子)。ヒマシ油の原料ですね。
ヒマシ油は、石けん、塗料、潤滑油などに使われ、下剤として日本薬局方にも収載されるなど、多用途・有用な植物油です。なお、食用油にはなりません。
ところで種子にはリシンという性のタンパク質があります。ヒマシ油にはほとんど移行せず、搾りカスに残ります。
最近も、国内でちょっと事件がありましたね…。
動物(ヒトを含む)の細胞内に入ったリシン分子(の片割れサブユニット)は、DNAの情報を読み取るリボソームを片っ端から壊して回るという、おそるべきメカニズムによって、その猛毒ぶりを発揮します。
唐「胡麻」なんていう名前ですが、種子を食べちゃダメですよ。
「リシン」とカナで書くと、必須アミノ酸のリシン(リジン)と紛らわしいですね。もちろん、別物です。トウゴマの毒は Ricin 、アミノ酸のほうは Lysine です。念のため。

シナマオウ。よく茂っています(常緑)

こちら、緑のボサボサとした植物が、シナマオウ(マオウ科)です。
この地上茎が、生薬のマオウ(麻黄)。発汗、鎮痛、鎮咳、去痰、利尿作用があり、葛根湯や小青竜湯などに配剤される、漢方において重要な生薬であります。

そういえば、東京のいろいろな植物園をめぐってまいりましたが、マオウをご紹介するのは今回が初めてですね。
よく茂ったスギナ風の外観です。しかしシダ植物ではありません。マツやイチョウと同じグループである裸子植物です。
砂漠のような乾燥地帯の原産です。もっとも地下水があるようなところに生えるようで、水分は割と好む植物です。そのせいか、雨の多い日本の環境にもよく慣れて育っています。

ぶら下がるキカラスウリたち

薬草園、初冬の実りの風景その2。
この黄色い紡錘形の果実は、レモン…ではありません。キカラスウリ(ウリ科)です。
6月の新宿御苑で、野生の花を見かけましたが、ここではしっかりと栽培されて果実をつけています。
これもまた、雌雄異株です。ですからこのキカラスウリは雌株ですね!
地中に太い根っこがあって、毎年そこから地上へツルをのばして生育する多年草です。
この根っこがカロコンという生薬で、解熱、鎮咳、止渇などの薬方にもちいます(詳しくは、6月の新宿御苑編をぜひ^^;)。
星薬科大学のキカラスウリは、とても実付きがよいですねぇ。


2015年の「東京薬草散歩」は、ここまでとなります。お読みいただきありがとうございました。
それでは、良いお年をお迎えください!

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