創業明治三十九年 仁生堂薬局 東京千住
2017-03-07

第25回 東京…を間近に望む神奈川県から

都県境を流れる多摩川沿いの、川崎市・登戸あたりから、早春の薬草をお届けします。

ハコベ(ナデシコ科)の花が咲いています。

星のやうなハコベの花

花弁は5枚ですが、各々がV字に二股の形をしているので、10枚の花弁があるようにみえますね。

写真のコハコベ、少し大きめなミドリハコベ、グッと大柄なウシハコベ…この3種類くらいが、一般にハコベと呼ばれます。
最近は、花弁の無い外来種、イヌハコベなんかも都市部を中心に生えています。

「繁縷」はもちろんハコベと読みますけど、音読みしてハンロウまたはハンルと読むと、生薬名になります。

今でこそ、七草粥のとき以外、あまり食べることもなく、あとは小鳥のエサなどにしていますが、昔は冬の青物としても重要であったことが想像に難くありません。
そして生薬として健康増進にも役立っていました。
わが国では民間薬として胃腸炎やむくみの解消としてそのまま食したり、搾り汁や煎じ液を飲むなどの、中国では催乳などにも用いられた模様です。
歯磨き粉の「はこべ塩」は、今でもありますね。


産毛に覆われ青白いヨモギの幼葉

ヨモギ(キク科)の若葉も生えそろって来ました。草餅にちょうど良い頃合いです。

近頃、都市部の高架下とかビル街では、温暖化した都市気候の影響で、アカザやノゲシなど、様々な草が半ば常緑化して、一年中生育するようになっています。ヨモギもそのひとつ。真冬でも、30cmくらいの高さまで育って、成長した緑の葉をつけていることも珍しくなくなりました。
しかし、このくらいの青白い若葉こそ、季節感のある早春のヨモギの姿だと感じます。
ヨモギは成長にともなって葉の形が大きく変化します。夏~秋の花穂を出したヨモギの姿と、この写真の姿は全く別物。知らないと、別の植物のように見えます。

生薬としては成長した葉や茎先を利用し、生薬名はガイヨウ(艾葉)といいます。第十六改正日本薬局方の第一追補(平成24年)で、局方に収載されました。
止血、止痛などの効果があり、漢方処方では芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)に配合されています。


こちらはギシギシ(タデ科)。

ギシギシのロゼット

この変な和名、茎、あるいは初夏につく果実をこすり合わせるとギシギシと音がするから…とか何とか。(ほんとかな?)
これも食べられますね。まだ筒状に丸まっている新芽はぬめりがあって、一名オカジュンサイ。

生薬名はヨウテイコン(羊蹄根)。民間療法で、新鮮な根の液汁をタムシ、湿疹などの外用薬として用いたとされます。
また同じタデ科の重要生薬、大黄と同じくアントラキノン類を含み、緩下剤としても用いられることもあったといいます。
ただ、こういった使い方は、素人判断で行うとトラブルを起こしますから、生薬に強い薬局の薬剤師さんなどに要相談ですね。

ところで羊蹄というと北海道の羊蹄山を連想します。由来を調べましたが、よく判りませんでした…。羊蹄山の周辺にギシギシが多いのでしょうか?


もうひとつ、小田急線の鉄橋を望む土手には、常緑の葉をつけた灌木が、ところどころにありました。

クコ。ちょっとボロいけど^^;

杏仁豆腐のトッピングの赤い実でおなじみ、クコ(ナス科)の冬越しの姿です。
今の季節は、花も実もなく、少々くたびれ気味^^;の葉っぱばかりですが…
もう少しして3月も下旬ともなると、新しいシュートが伸びだして、みずみずしい葉を天ぷらなどにして賞味できます。

クコからつくられる生薬は
クコシ(枸杞子):第十七改正日本薬局方
ジコッピ(地骨皮):同上
クコヨウ(枸杞葉):局外生薬規格2015
…と、ひとつの植物から、公定書に収載された生薬が3種類もつくられるのはクコだけでしょう。強壮、解熱といった効果があり、クコ酒やクコ茶もありますね。

これらのほか、薬草のジャンルからはちょっと外れますが、ノビルや菜の花、カラシナなども、春の川沿いで楽しめる野の味です。

今回は2月中に掲載できず失礼いたしました。

春の摘み草は、同時に薬草との出会いでもある、というお話、いかがでしたでしょうか。
それではまた!

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